琴平自動車株式会社

フューエルインジェクター（FI）とも呼ばれるインジェクターは、エンジンに取り込まれた空気の量と温度、その時の走行状況等をもとにコンピュータが導き出した必要な量の燃料を、最適なタイミングで車やバイクのエンジンに供給する燃料噴射装置のことです。

そこで今回は、小型車・普通車からトラック等の大型車向けまで、幅広く車用品を取り扱ってきた琴平自動車が、インジェクターの構造や仕組みについてわかりやすく解説していきます。

車のエンジン性能だけでなく、環境性能も支えてくれるインジェクターの構造について知っておきたいという方は、ぜひ最後までご確認ください。

インジェクターの基本的な構造・仕組みは？

まずは、インジェクターが燃料を噴射する基本的な仕組みについて、理解していきましょう。

インジェクターは、フューエルデリバリーパイプという管で燃料タンク、燃料ポンプとつながっていて、その中にはポンプによって高い圧力（燃圧）がかけられた燃料が常時充填されています。インジェクター内の燃料は電子制御によって先端のノズルが開くと燃圧で噴出され、エンジンのインテークマニホールド内のポート、またはシリンダーへ直接噴射される仕組みになっているのです。

なお1回の噴射でインジェクターから噴出できる燃料の量は、ノズル先端の噴出口の数と孔径、そしてノズルが開く時間によって決まります。一般的にはノズルの孔径が大きい、またはノズルが開く時間が長いインジェクターほど、一度にたくさん燃料を噴出できるとされています。

一方でノズル先端の噴出口の数が多く、個々の孔径が小さいインジェクターほど燃料を細かなミスト状にして噴射できるため、エンジンでの燃焼効率が良くなるという特徴があります。

インジェクターの基本的な構造とともに、構造による各種インジェクターの特徴・違いについても、覚えておくと良いでしょう。

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インジェクターの構造は大きく2種類

ここまでに見てきた通り、インジェクターの基本的な仕組みは「ノズルの開閉と燃圧によって燃料が噴出する」というものです。ただその構造としては、大きく以下の2種類があります。

• ソレノイド式
• ピエゾ式

そこで以下からは、「ソレノイドインジェクター」と「ピエゾインジェクター」の構造の違いや特徴について、それぞれ見ていきましょう。

「ソレノイドインジェクター」の構造と特徴

ソレノイドインジェクターとは、電気を通すと磁性を帯びる（＝磁石になる）性質を持つソレノイドというコイルの特性を利用してノズルの先端を開閉し、燃料を噴射するタイミングや量を調整するインジェクターのことです。

大まかな構造としては、まずエンジンを制御するコンピュータが燃料噴射の必要性を検知したタイミングで、インジェクター内部のソレノイドに通電させます。通電によって磁力を帯びたソレノイドは、同じくインジェクター内部に設置された金属であるブランジャーコア、またその先端に設置されているニードルを一緒に引き寄せ、ノズルの先端の噴出口を開放することによって燃料を噴射させるのです。

なお、車やバイクのエンジンには、大きくガソリンを燃料とする「ガソリンエンジン」と軽油を燃料とする「ディーゼルエンジン」の2種類がありますが、ソレノイドインジェクターは主にガソリンエンジンのインジェクターとして採用されている種類です。大型トラック等ディーゼルエンジンを搭載する車種にはほとんど使われていませんので、併せて覚えておきましょう。

「ピエゾインジェクター」の構造と特徴

ピエゾインジェクターとは、圧力を加えると電圧を発生させ、電圧を加えると変形する性質を持つピエゾ素子の働きを利用してノズル先端を開閉し、燃料を噴射するインジェクターです。

ノズルの開閉は、ソレノイドインジェクターと同じくニードルを動かすことによって行いますが、ニードルを動かすための構造・仕組みに違いがあります。具体的には、ニードルにかかる燃圧の変化を利用してノズルを開閉する構造になっており、ニードルの後端の燃圧が高い時は先端が下がってノズルが閉まり、逆に後端の燃圧が下がるとニードルの先端が引き上げられてノズルが開き、燃料が噴射される仕組みになっているのです。

なおピエゾ素子には、ソレノイドに比べて動作速度が速いという特徴があります。動作速度が速いということは、燃料を噴射する量やタイミングをより精密に制御できるということです。

そのためピエゾインジェクターは、ソレノイドインジェクターよりも燃料供給装置としての精度・耐久性に優れていると考えられており、主に精密な燃料噴射が求められるディーゼルエンジン車のインジェクターとして採用されています。ただ一方で、高精度に製造されている分、ソレノイドインジェクターよりも搭載コストが高いのも特徴です。

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【構造別】インジェクターの仕組みと特徴まとめ

最後に、ここまでに見てきたソレノイドインジェクター、ピエゾインジェクターの構造について、以下の一覧表に簡単にまとめ直しました。各種のインジェクターがどのような構造や仕組みで作動しているのか、短時間で大まかに確認・理解したいという時の参考にしてください。

ソレノイドインジェクターの概要	通電によって磁力を帯びる「ソレノイド」の性質を利用し、ノズルを開閉する構造のインジェクター 磁力でブランジャーコアとニードルを引き寄せてノズルを開き、燃料を噴射する 比較的低コストで搭載できるのが特徴で、ガソリンエンジン車に幅広く採用されている
ピエゾインジェクターの概要	圧力をかけると電圧を発生させ、電圧をかけると変形する「ピエゾ素子」の性質を利用し、ノズルを開閉する構造のインジェクター ニードル後端の燃圧が下がると先端が引き上げられてノズルが開き、燃料を噴射する 部品としての精度、耐久性ともに優れている代わりに、搭載コストが高いのが特徴 主にディーゼルエンジン車に採用されている

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燃料噴射量を調節する仕組み・構造が異なるインジェクターについて

ここまでに見てきた通り、インジェクターが燃料を噴射する構造には、大きくソレノイド式・ピエゾ式の2種類があります。一方で、燃料の噴射量を調節する仕組みや構造にまで着目するとさらにコモンレール式・ユニット式の2種類に大別することができます。

そこで以下にコモンレール式インジェクター、ユニット式インジェクターの概要について簡単に紹介していきます。ソレノイド式・ピエゾ式インジェクターの構造と併せて、こちらも確認しておきましょう。

コモンレール式インジェクターの概要	燃料を高圧パイプでノズルまで運び、電子制御（コンピュータ制御）によって噴出するインジェクター ガソリン車をメインに、ほとんどすべてのインジェクターがこの方式を採用している
ユニット式インジェクターの概要	運動の方向を変える「カム」の力で燃料を噴射するインジェクター 電子制御は、燃料の噴射量を減らしたい場合のみ使用する ディーゼルエンジンをメインに、一部メーカー製のインジェクターだけが採用している

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