ギアオイルの80や90は粘度のこと!数字が示す意味や性能の違いとは
たくさんの金属製部品を組み合わせて作られる車には、さまざまな潤滑油が使われています。
そこで今回は、小型・普通車向けからトラック等の大型車向けに至るまで、幅広く車の部品を取り扱う琴平自動車が、代表的な潤滑油の一つである「ギアオイル」について解説。
ギアオイルとは何か、エンジンオイルとの違いやパッケージに併記されていることの多い80、90等の数字の意味に加え、適切な交換時期の目安についても紹介していきます。
個人や会社で車を保有しているなら、トラブルを避けるためにもぜひ最後までご覧ください。
目次
ギアオイルとは?エンジンオイルとの違いは?
ギアオイルとは、機械類に使われる潤滑油のうち、特に歯車(ギア)の潤滑性を補助する目的で使われるオイルのこと。
車においては、主にエンジンが生み出す動力をタイヤに伝える駆動系装置の稼働を助ける潤滑油のことを、総じて「ギアオイル」と呼びます。
ギアオイルが使われる駆動系装置の具体例としては、以下が挙げられるでしょう。
- MT車の変速機である「トランスミッション」
- AT車の変速機である「オートマチック・トランスミッション」
- 車のスムーズなコーナリングをサポートする「デファレンシャルギア」
- 車の進路を変える際、ハンドルの動きをサポートする「ステアリングギア」
- エンジンの動力を車軸側へ伝える「ハイポイドギア」 等
なお、ギアオイルは車種や使用する装置、求める効果により使うべき種類が変わってきます。
ミッションオイルやデフオイル等、オイルを使用する装置別に呼び方を分けることもありますので、併せて覚えておくと良いでしょう。
関連記事:「車を構成するパーツとは?代表的な部品の名称・役割を一覧で紹介!」
エンジンオイルとの最大の違いは用途
ギアオイルが車の駆動系装置の稼働を助けるのに対し、エンジンオイルは、動力を生み出すエンジンそのものの働きをサポートします。両者には、用途において大きな違いがあるのです。
また、後述するオイルの粘度や質の規格も、ギアオイルとエンジンオイルでは異なります。
エンジンオイルやギアオイルを交換する際は、両者を混同しないよう注意するとともに、それぞれ車のメーカーが推奨する粘度・品質・等級のものを使うようにしてください。
80や90等、ギアオイルに関する数字の意味の違い
ギアオイルがどんな潤滑油なのかわかったところで、次はギアオイルに関する数字の意味について、学んでいきましょう。
カー用品店等で販売されているギアオイルのパッケージには、必ず「80W90」や「85」「GL-4」等の数字が併記されています。
これらの数字は、それぞれSAE規格とAPI規格をもとに評価されたギアオイルの粘度と品質等級を表しているのです。
ギアオイルの粘度について表す数値
まず「80W90」や「85」等、2桁の数字とWの組み合わせが表すのは、ギアオイルの粘度です。
粘度とは、その液体が持つ粘り気の程度のこと。
SAE規格では数字が大きくなるほど粘度が高く、ドロドロした硬い液体であり、数字が小さくなるほど粘度が低く、サラサラしたやわらかい液体ということになります。
ギアオイルの場合、粘度が高いほど油膜が厚くなるため部品の保護性が上がりますが、その分、流動性は下がると理解しておきましょう。
なお粘度表記には、大きく「シングルグレード」と「マルチグレード」の2種類が存在します。
- シングルグレード:数字のみで粘度を表す。温度による変化が少ないが低温に弱い
- マルチグレード:数字とWで粘度を表す。低温時と高温時で粘度が変わるのが特徴
Wとは「winter」の略で、その左側の数字は低温時においての粘度と対応可能な最低温度を、そして右側は、高温時にどのくらいの粘度を保てるかを表す数字だと覚えておきましょう。
関連記事:「エンジンオイルの粘度指数とは?言葉の意味と粘度表記の読み解き方」
ギアオイルの性能や特性を表す数値
一方で「GL-3」等、GLと1~6の数字の組み合わせが表すのは、ギアオイルの品質や特性です。
GL-1~GL-6まで、API規格に基づいて全6段階で評価されるギアオイルの等級は、基材となるベースオイルの性質や添加剤の種類、割合、また潤滑油としての性能によって決まります。
おおまかには、GLの後の数字が大きくなるほど添加剤の割合が大きく、圧力や摩擦に強いオイルになると理解しておけば良いでしょう。
なお、API規格はエンジンオイルの等級付けにも使われますが、ガソリンエンジンオイルに対しては「S」、ディーゼルエンジンオイルには「C」から始まる等級が使用されます。
ギアオイルとは異なる基準で評価・等級付けされているので、併せて覚えておいてください。
関連記事:「エンジンオイルのAPIとは?規格ごとの表記の見方やグレードを解説」
80Wや90等、数値によるギアオイルの粘度の違い
ここからは、数値が変わるとギアオイルの粘度や質にどのくらいの違いが出るのか、それぞれ説明していきます。
まずは、「80W90」等と表記される粘度の数値の違いについて、以下で見ていきましょう。
ギアオイルの粘度表記について知っておきたいこと
先述した通り、ギアオイルの粘度表記のうち左側の「数字+W」の部分は、そのオイルが対応可能な最低気温の目安と、低温時の粘度を表しています。
以下に、それぞれの数字とWの組み合わせが示す対応可能な最低気温を一覧にしましたので、ギアオイルの粘度表記を見る上での参考にしてください。
- 70W:-55度
- 75W:-40度
- 80W:-26度
- 85W:-12度
なお、一般的にギアオイルの粘度は、排気量が大きい大型車やシビアコンディションを走行する車なら高粘度が、短距離走行が多い車では低粘度が適しているとされます。
ギアオイルを選ぶときは、基本的にお乗りの車のメーカーが指定・推奨する種類であれば問題ありませんが、上記も一つの考え方として覚えておくと良いでしょう。
また、表記の読み方と併せて知っておきたいのが、エンジンオイルとの評価方法の違いです。
SAE規格のうち、ギアオイルが「J306」という規格で評価されているのに対し、エンジンオイルは「J300」という規格に基づいて評価されています。
潤滑油の粘度は、表記される数字が大きくなればなるほど高くなりますが、エンジンオイルとギアオイルの場合は、仮に同じ粘度表記であっても、実際の粘度は大きく異なるのです。
例えば、同じ「80」と粘度表記されたギアオイルとエンジンオイルがあったとしましょう。
数値的にはまったく同じ粘度を持つはずの両者ですが、実際には、ギアオイルの方がエンジンオイルよりも低粘度になります。
この点も、エンジンオイルとギアオイルの大きな違いとして、ぜひ覚えておいてください。
GL-3等、数値によるギアオイルの品質や等級の違い
次に「GL-3」等の表記でギアオイルの品質や性能、特徴を示す数値の違いについて、見ていきましょう。
まずは、GL-1~6の各等級ギアオイルの自動車向けの用途・概要について、以下で確認してください。
GL-1
軽負荷条件向けで、無添加のベースオイルから作られています。旧式のジープ車等、ごく一部の例外を除いて自動車の潤滑条件を満たさないため、基本的に車には使用されません。
GL-2
耐摩耗性添加剤が含まれ、GL-1に比べて高い潤滑性を持っています。ただ、現代の自動車の潤滑条件を満たさないため、特殊な場合を除き、車にはほとんど使用されません。
GL-3
中程度の負荷条件向けで、一部種類のギアを搭載するトラック等のトランスミッションに使われることが多い種類です。他には、緩やかな条件下のステアリングギア等にも使用します。
GL-4
軽負荷から重負荷まで、さまざまな条件に対応できるギアオイルです。MT車のトランスミッションギアをはじめ、デファレンシャルギアやステアリングギア等にも使用されます。
GL-5
GL1~4までのオイルよりも高粘度で、過酷な条件下でも使用できるギアオイルです。自動車向けの用途としては、特に過酷な条件下で走行する際のデファレンシャルギア等に使用します。
GL-6
6つの等級の中で最も粘度が高く、極めて過酷な負荷条件向けのギアオイルです。デファレンシャルギア等に使用できますが、一般的な車に対し使用が求められることはありません。
上記の通り、GL1~2は現代の自動車の潤滑油としては基本的に使用できず、GL-3は一部のトラックや乗用車のみ、GL-6に関しても、実用的な規格としては使われていません。
つまり、現代の日本において幅広く使用されているギアオイルの等級は、GL-4とGL-5のみと考えて良いでしょう。
API規格に基づく品質表記は、あくまでギアオイルの品質や性能の特徴を表すためのものです。
そのため、数字が大きいギアオイルを選べば質が高く、車に良いというわけでもありません。
ギアオイルの等級は、GL-4またはGL-5のうち、お乗りの車のメーカーが指定・推奨する種類を選べば問題ないと理解しておきましょう。
ギアオイルを交換すべき時期の目安
常に強い摩擦と高温にさらされる駆動系装置を守り、安全な走行をサポートするギアオイルは、定期的に交換が必要な消耗品です。
具体的には新車の購入時、または前回の交換時から換算して走行距離では20,000㎞、使用期間にして2年が経過したタイミングでのどちらかで、整備士にオイル交換を依頼してください。
なお、予定していた交換時期より早いタイミングであっても、車の運転中に以下のような異常を感じる場合は、ギアオイルが劣化している可能性があります。
- ギアチェンジの際に、ガリガリと変な音がする
- ギアチェンジの際に、何かひっかかるような感覚がある
その場合は、整備士に相談した上で、早めに点検とギアオイルの交換を実施しましょう。
関連記事:「車の部品・消耗品の交換時期は?必要な費用の目安と一緒に解説!」
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