オイルエレメントとオイルフィルターの違いを解説!基本的な構造・種類とは
混同されることが多い車のオイルエレメントとオイルフィルターですが、厳密に言うと、それぞれの名称が指す範囲には違いがあります。
そこで今回は、小型・普通車からトラック等の大型車向けまで、車の部品を幅広く扱う琴平自動車が、オイルエレメントとオイルフィルターの違いや基本的な構造、種類について解説。
併せて、オイルエレメント・オイルフィルターを交換する方法も、わかりやすく紹介します。
オイルエレメントやオイルフィルターの交換時期が迫っていて、ご自身での購入や交換を検討しているという方は、ぜひ参考にご覧ください。
目次
オイルエレメントとオイルフィルターの違いとは
オイルエレメントとオイルフィルターは、どちらもエンジンオイル中に溜まった汚れやスラッジと呼ばれるすす、鉄粉等の異物を除去し、きれいな状態に保つ役割を担っています。
2つのパーツに同じものというイメージがあり、呼び方が混同されるのは、このためなのです。
また、オイルエレメントとオイルフィルターの呼び方を混同するのは、車を運転するユーザー側だけではありません。
整備士やカーショップのスタッフ等の中でも、両者の呼び方を区別しないのが一般的です。
実際に琴平自動車においても、オイルエレメントとオイルフィルターの呼び方を区別しておらず、どちらも「エンジンオイルをきれいにするためのパーツ」として扱っています。
しかし厳密には、オイルエレメントとオイルフィルターの名称が指すパーツの範囲には、以下のような違いがあるのです。
- オイルエレメントとは:エンジンオイルをきれいにするための「ろ紙」のこと
- オイルフィルターとは:オイルをきれいにするための「カートリッジ」のこと
つまり、エンジンオイルをきれいにするために設置するカートリッジがオイルフィルターであり、その中に格納されているろ紙がオイルエレメントということになります。
オイルエレメントとオイルフィルターは、本来、それぞれ別のパーツを指す言葉なのです。
交換の依頼時には、両者を明確に区別しなくてもOK
オイルエレメントとオイルフィルターは、どちらも定期的に交換が必要な消耗部品です。
そのため、車の所有者から整備士へ交換を依頼するケースも考えられますが、その際、両者を明確に区別して呼ぶ必要はありません。
先述したように、オイルエレメントとオイルフィルターは、プロでも混同して呼ぶことが多いパーツです。どちらの呼び方で交換を依頼しても、問題なく対応してもらえるでしょう。
関連記事:「車の部品・消耗品の交換時期は?必要な費用の目安と一緒に解説!」
オイルエレメントとオイルフィルターの種類について
オイルエレメントとオイルフィルターの違いがわかったところで、次は、オイルフィルターにどのような種類があるのかについて学んでいきましょう。
一般的に使用されるオイルフィルターには、フルフロータイプとフルフロー・バイパス併用型、そしてコンビネーション型の3種類があります。
いずれも、汚れたエンジンオイルをオイルパンから吸い上げ、汚れをろ過してエンジン内へ戻すという仕組みは共通していますが、搭載されているエレメントの種類に違いがあるのです。
それぞれのオイルフィルター、エレメントの違いについては、以下を確認してください。
フルフロータイプ
3つの中で最も一般的であり、ガソリンエンジンに幅広く使用されるオイルフィルターです。
搭載されているのは「フルフロータイプ」と呼ばれるエレメントで、多量のオイルを効率的にろ過できる素材から作られています。
なお、エレメントのみを交換するリプレイス型と、フィルターごと取り替えるスピンオン型の2種類があるところも、このタイプの特徴です。
フルフロー・バイパス併用型
対して、フルフロー・バイパス併用型には、先述のフルフロータイプに加え「バイパスタイプ」と呼ばれるエレメントも一緒に搭載されています。
バイパスタイプのエレメントの特徴は、フルフロータイプに比べ、ろ紙の目が細かいこと。
そのため、フルフロー・バイパス併用型のオイルフィルターでは、フルフロータイプのフィルターでは取り逃がしてしまうカーボン系の汚れや粒子の除去も可能になります。
ガソリンエンジン車に比べ、エネルギー燃焼時にすすが発生しやすいディーゼルエンジン車において、よく使われる種類です。
コンビネーション型
フルフロー・バイパス併用型では、2種類の異なるエレメントをそれぞれ内蔵しています。
対して、コンビネーション型では、フルフロータイプとバイパスタイプの2種類のろ紙をまとめて、1つのエレメントとして内蔵しているのが特徴です。
ディーゼルエンジン車向きのフルフロー・バイパス併用型の機能はそのままに、バランスよく効率的なろ過が可能な構造となっています。
オイルエレメント、オイルフィルターの基本構造は?
オイルフィルターには、オイルエレメント以外にもさまざまなパーツが搭載されています。
そこで、ここからはフルフロータイプのオイルフィルターを例に、オイルフィルターの基本的な構造と代表的なパーツの役割について見ていきましょう。
フルフロータイプのオイルフィルターは、端的に表すと以下のような構造をしています。
- 金属フレームを取り囲むように、ひだ折りにしたオイルエレメントを設置
- エレメントの上部には、リリーフバルブとサポートスプリングを設置
- エレメントの下部には、アンチドレーン弁とガスケット、レギュレーターバルブを設置
オイルフィルターに内蔵されるパーツのうち、エレメント以外のパーツが担う役割については、以下でそれぞれ確認してください。
リリーフバルブ
逃がし弁とも呼ばれるリリーフバルブには、以下のような緊急時に開いて、エンジン内のエンジンオイルの流量を確保する役割があります。
- オイルの粘度が高いために、エンジン始動時に十分な流量がなくなったとき
- エレメントが目詰まりを起こし、オイルのろ過がうまくいかなくなったとき
ただし、リリーフバルブが開くということは、ろ過していない汚れたままのオイルがエンジン内を循環するということ。これは車とエンジンにとって、決して良いことではありません。
そのような状況にならないように、オイルエレメントやオイルフィルターは適切なタイミングで交換すべきだと覚えておきましょう。
関連記事:「オイルエレメントは交換しないとどうなる?リスクや交換目安を解説」
サポートスプリング
セットスプリングとも呼ばれるパーツで、車の走行やエンジンの稼働、またエンジンオイルの油圧による振動からオイルエレメントを守り、動かないようにする役割を担っています。
アンチドレーン弁
汚れたエンジンオイルの流入路に設置されていて、一度オイルフィルターに入ったオイルが、エンジン停止中にオイルパンの方へ逆流しないようせき止める役割があります。
また、始動時にエンジンがオイル切れになってしまわないようにする働きも持っています。
ガスケット
エンジン本体との接続面に生じる隙間を埋めると同時に、オイルフィルターを密閉し、高温のエンジンオイルが漏出しないようにするためのパーツです。O-リングとも呼ばれています。
高温・高圧の環境下でも密封性を保てるように、高品質な素材で作られているのが特徴です。
レギュレーターバルブ
圧力調整弁とも呼ばれるパーツで、オイルフィルターに必要以上の圧力がかからないように、油圧を調節する役割を持っています。
フィルターにかかる油圧が一定量を超えると開放され、エンジンオイルを外部へ逃がします。
オイルエレメント、オイルフィルターの交換方法と注意点
続いては、オイルエレメント・オイルフィルターの交換方法について、紹介していきます。
オイルエレメントやオイルフィルターは、エンジンオイルと一緒に交換するのが一般的です。
そのため、ここでもオイルとフィルターを同時に交換する前提で、手順を見ていきましょう。
交換の手順①必要な道具を用意する
エンジンオイルとオイルエレメントの交換には、基本的に以下のすべての道具が必要です。
- 車体を持ち上げるためのジャッキ
- 持ち上げた車体を固定するためのリジットラック
- 古いエンジンオイルを吸い出すためのオイルチェンジャー
- 古いエンジンオイルを受け止めるための廃油受け皿
- 古いエンジンオイルを処分するための廃油処理箱
- ドレンボルトを開け閉めするためのメガネレンチ
- オイルエレメントを着脱するためのオイルエレメントレンチ
- 新しいエンジンオイル、オイルエレメント、ガスケット、ドレンワッシャー
- 油や汚れを拭き取るためのウエス、パーツクリーナー
- 新しいエンジンオイルを補充するためのオイルジョッキ
エンジンオイルとオイルフィルターの交換に必要な道具は、車種や構造により変わります。
オイルの上抜きが不可能で、車の底部からオイルとフィルターの交換をしなければならない車種の場合は、車体を持ち上げるためのジャッキが必要です。
一方、エンジンオイルの上抜きが可能で、かつ、オイルフィルターが車体の上部についている車種の場合は、ジャッキがなくても問題ありません。
ご自身でエンジンオイルとオイルフィルターを交換する場合は、事前に取扱説明書を確認した上で、お乗りの車の構造に合った道具を用意する必要があると覚えておきましょう。
また、オイルフィルターには常に200mlほどのエンジンオイルが含まれていますので、交換用の新しいエンジンオイルは、説明書記載の規定量よりも少し多めに準備してくださいね。
交換の手順②古いエンジンオイルを抜く
道具が揃ったら、車種に合わせて上抜き、または下抜きで古いエンジンオイルを抜きます。
上抜きの場合は、オイルレベルゲージの挿入口にオイルチェンジャーのノズルを差し込み、オイルパンから古いエンジンオイルを吸い出してください。
下抜きの場合は、まず車をジャッキアップして、リジットラックでしっかりと固定します。
そして車の下に潜り込み、底部のオイルパンと排液口の位置を確認し、その下に廃油処理箱か廃油受け皿をセットしてください。
その後は、メガネレンチでドレンボルトを外し、排液口から古いエンジンオイルを排出させましょう。
関連記事:「エンジンオイルは上抜きが失敗しにくい!メリットや下抜きとの違いを解説」
交換の手順③古いオイルフィルターを外す
古いエンジンオイルがすべて抜けたら、次は、オイルフィルターを外していきましょう。
具体的には、オイルエレメントレンチを使って車の上部、または底部にあるオイルフィルターのキャップボルトを反時計回りに回し、少しずつ緩めていきます。
流出してくるエンジンオイルに注意しながら作業を続け、フィルターを取り外してください。
交換の手順④新しいオイルフィルターを取り付ける
ここからは、いよいよ新しいオイルフィルターを取り付ける作業に移っていきますが、まずは事前準備として以下2つの作業を完了させてください。
- ウエスとパーツクリーナーで、取り付け部の古いオイルやフィルターを拭き取る
- 新しいガスケットに、これから入れる予定の新しいエンジンオイルを塗っておく
あとは、オイルを塗っておいたガスケットと一緒に新しいオイルフィルターを取り付け、周辺に付着したオイルをウエスで拭き取れば、フィルターの交換は完了です。
交換の手順⑤新しいエンジンオイルを補充する
最後に、車種ごとの規定量に合わせ、新しいエンジンオイルを補充していきます。
具体的な手順としては、まず車体上部のオイルレベルゲージ挿入口にオイルジョッキを設置し、規定の半分ほどの量までエンジンオイルを注ぎ入れましょう。
続いて、オイルレベルゲージで確認しながら、規定量になるまでオイルを注ぎ足します。
ここまで終わったら、少しエンジンを稼働させて、フィルターにオイルを含ませてください。
エンジンを止め、再びオイルレベルゲージでエンジンオイルの量を確認し、規定量になるように補充・調整したら、オイルの交換も完了となります。
なお、下抜きをした車の場合は、先にドレンボルトを締め直しておく必要があります。
あらかじめドレンボルトの周辺に付着した古いオイルを拭き取り、新しいドレンワッシャ―とドレンボルトを排液口に取り付けましょう。
関連記事:「エンジンオイルの量はいつ確認する?タイミングや正しい手順を解説」
オイルエレメント、オイルフィルターは自分で交換できる?
一般的に、オイルエレメント・オイルフィルターは、以下いずれかのタイミングを目安に交換すべきだと言われています。
- お乗りの車のメーカーが、取扱説明書にて推奨している交換タイミング
- 車の購入時、または前回の交換時期から数えて、オイルを2回交換した時
オイルフィルターの交換は、正しい手順で行えば、整備士でなくても対応可能な作業です。
ただし、排液口やフィルターが車の底部に設置されていて、車体の下に潜って作業しなければならない場合は、重大な事故やケガのリスクも伴います。
また、整備士にオイルフィルターの交換を依頼した場合にかかる費用の目安は、小型・普通車では数千円程度です。
対して、先述した交換に必要な道具を一式買い揃えようと思うと、安価なものを選んでも数万円はかかると考えられます。
以上を踏まえると、オイルフィルターの交換はご自身で行うよりも、プロの整備士に依頼するのが望ましいと言えるでしょう。
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