エンジンオイルが異常に燃える・減る原因は?対策や引火点と一緒に解説
車のエンジンオイルは、前回の交換時から半年~1年の期間が経過するか、5,000~15,000㎞の距離を走行したタイミングでの交換が推奨されています。
しかし、上記の使用期間・走行距離より短いにも関わらず著しくエンジンオイルが減少する場合は、異常にオイルが燃えて消費されているのかもしれません。
今回は小型・普通車向けからトラック等の大型車用まで、さまざまな自動車部品を取り扱う琴平自動車が、エンジンオイルが燃えてしまう原因や発火温度、引火点等について解説します。
また、異常にエンジンオイルが燃えて減少するのを食い止める方法や、車の火災予防策についても紹介しています。車を安全に利用するために、ぜひ最後までご覧ください。
目次
車の走行中、エンジンオイルは少しずつ燃えている
エンジンオイルが異常に燃える原因を紹介する前に、まずはエンジンの仕組みと、エンジンオイルの役割について見ていきましょう。
エンジンオイルは、エンジン下部のオイルパンと呼ばれるパーツの中に格納されています。
エンジンが始動すると、エンジンオイルはオイルパンからエンジンの各部品へ行き渡ります。そして各部品の間に薄い油膜を張った後、オイルパンへと戻り再び各部へ巡って、エンジンが動く限り循環を続けます。
その循環の過程で、エンジンオイルはエンジン内部の潤滑性・密封性を高め、さらに冷却、洗浄、防錆の作用をもたらしてくれるのです。
なお、エンジンオイルが循環できるエリアは限られており、現代の気密性が高いエンジンではオイルが漏れ出すことはほとんどありません。
しかし以下のようなケースでは、微量のエンジンオイルがオイルパンと隣接する燃焼室にまで漏れてしまうことがあります。
- エンジンブレーキを使用する際に、大量のエンジンオイルが吸い上げられた
- 経年劣化等の理由から、クリアランス(部品同士の隙間)が広がってしまった
燃焼室へ漏れ出したエンジンオイルは混合気(霧状のガソリンと外部からの空気が混ざったもの)と一緒に燃えてマフラー等の排気され、その分だけ、エンジンオイルの量は減少します。
このように、本来エンジンオイルはガソリンと一緒に少しずつ燃える消耗品であるため、一定の期間・距離を使用すると、たとえ新車であっても徐々に消費されていきます。
関連記事:「車の部品・消耗品の交換時期は?必要な費用の目安と一緒に解説!」
エンジンオイルが異常に燃える原因は「オイルの内部漏れ」
走行する度に少しずつ燃えて、減っていくエンジンオイルですが、以下のようなペースでオイルが減るのは異常であり、背景に何らかのエンジントラブルが潜んでいると考えられます。
- 前回交換時から1,000㎞ほどしか走っていないのに、半分くらいなくなっている
- 明かに交換するには早いタイミングで、エンジンオイルランプが点灯した 等
具体的には、エンジンオイルが走行の度に燃焼室に漏れてしまうオイル上がり、またはオイル下がりが起こっている可能性が高いでしょう。
「オイル上がり」が原因でエンジンオイルが燃えるパターン
エンジン内部にはエンジンの動力を駆動系に伝えるシリンダーという部品があり、その中には上下運動を繰り返すピストン、そしてピストンリング等の部品が設置してあります。
このうちピストンリングの主な役割は、シリンダーやピストンが動く際に起こる衝撃を吸収し、隣の燃焼室へエンジンオイルが侵入するのを防ぐことです。
しかし、エンジンオイルの不足や劣化によりエンジン内の密封性と潤滑性が低下すると、シリンダーやピストンリングが摩耗し、傷だらけになってしまいます。
その傷がクリアランスとなり、シリンダーから燃焼室にまでエンジンオイルが侵入してしまうようになる現象が「オイル上がり」です。
急激にエンジンオイルが減る他、特にエンジンへの負荷が大きい長距離、高速での走行後にマフラーから白煙が出る場合は、このオイル上がりが強く疑われます。
「オイル下がり」が原因でエンジンオイルが燃えるパターン
エンジンの燃焼室の上部には、外部から空気を取り込んで混合気を送り込む吸気バルブと、燃焼済みの混合気をエンジンの外へ排出するための排気バルブが設置されています。
そして、これら2つのバルブの弁がカムシャフトに押されて開くときにエンジンオイルの侵入を防いでいるのが、バルブシールまたはステムシールと呼ばれる部品です。
「オイル下がり」とは、ゴム製のバルブシールやステムシールが劣化したことで、その隙間から燃焼室へエンジンオイルが落ちてきてしまうこと。
特に走行した後ではなく、エンジンを始動したときに大量の白煙が出て、しばらくすると落ち着くと言う場合は、オイル下がりの可能性が高いでしょう。
関連記事:「エンジンオイルの滲み・漏れはなぜ起こる?原因や適切な対処法とは」
エンジンオイルが内部漏れする原因の一つは、オイルの劣化
オイル上がりやオイル下がりのような、エンジン内部でエンジンオイルが漏れる現象のことを「内部漏れ」と言います。
そして内部漏れ等、エンジンオイルが漏れる大きな原因の一つがエンジンオイルの劣化です。
長期間にわたり放置されたエンジンオイルは、徐々に汚れて劣化し、機能を失っていきます。
具体的には、スラッジと呼ばれるエンジンの燃焼カスが混入や粘度の低下が起こり、エンジンの気密性や潤滑性を補い、エンジンを保護するという役割を果たせなくなってしまいます。
その結果、部品同士に激しい摩擦が生まれて損傷し、内部漏れによって大量にエンジンオイルが燃える「オイル消費」や「オイル食い」が発生するのです。
関連記事:「エンジンオイルの劣化をどう判断する?基準と交換時期の見極め方」
エンジンオイルの発火温度・引火点は?火災の原因になる?
走行の度に少しずつ、またエンジンの状態によっては大量に燃えると聞くと、エンジンオイルが車両火災の原因になるのではないか、と不安になる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、こまめな点検・交換を徹底し、規定量を守って使用する限りは、車両火災を引き起こすリスクはかなり低いと言えるでしょう。
ただし、走行中にエンジンオイルの発火温度を超える高温な物質に接触したり、引火点を超えた状態で火種に近づくことがあれば、オイルが発火し火災となる可能性も考えられます。
エンジンオイルの発火温度、引火点とは
- 発火温度:近くにきっかけとなる火種がなくても、その物質が自然発火する温度のこと
- 引火点 :空気中にきっかけとなる火種があるとき、その物質に引火する温度のこと
国土交通省が自動車不具合による事故・火災について調査する目的で行なった実験によると、エンジンオイルの発火温度は350度でした。
【参考】エンジンルーム内の可燃物置き忘れなどに関する調査結果(平成22年4月 国土交通省自動車交通局)
また、危険物のうち第4類の第三または第四石油類に分類されるエンジンオイルの引火点は、70度以上200度未満です。
つまり、エンジンオイルそのものが350度以上の高温になった場合、または200度前後になったタイミングで周囲に火の気があれば発火する、ということになります。
具体的なシチュエーションとしては、以下のようなケースが考えられるでしょう。
- 走行中にエンジンオイルが漏れ出し、数百度の高温になった排気管と接触する
- エンジンルーム付近にウエス等の置き忘れがあり、火種として存在していた
しかしエンジンの冷却を助けるという性質上、たとえ走行中であっても、エンジンオイルが200度を超えることはまずありません。
事故や整備不良等、他の要因が重ならない限りエンジンオイルが原因で車両火災になることはありませんので、安心してください。
車両火災を予防するためにできること
車両火災の多くは整備不良による燃料漏れをはじめ、ウエスや軍手、落ち葉、小動物・鳥類の羽毛等、外からエンジンルームへ侵入した物が火種となって引き起こされます。
以下を参考に車の日常点検を徹底することが、車両火災の何よりの予防策だと考えましょう。
- エンジンオイル等の油脂類はこまめに点検し、整備不良のないようにする
- 点検時に使う軍手やウエス等の可燃物を、ボンネット内に置き忘れないよう徹底する
- エンジン周りを点検するときは、小動物や鳥類が侵入した形跡がないか確認する
- エンジンルームへの侵入を防ぐため、燃えやすい落ち葉が多い場所の走行は避ける
エンジンオイルが燃える、減りが早いときの対処法
ここからはエンジンオイルが異常なスピードで燃える、減ってしまうときにできる対処法を3つの段階に分けて紹介していきます。
第1段階:エンジンオイルを注ぎ足すか、オイル添加剤を混ぜる
「今回初めて、エンジンオイルの異常な減りを確認した」という場合は、エンジントラブルが発生して間もないか、軽微なトラブルのみ発生している状況と考えられます。
そのため、応急処置として不足している分のエンジンオイルを注ぎ足す、または添加剤でオイルの機能を補う応急処置で対処しても問題ないでしょう。
ただし、本来であればエンジンオイルは全量交換をすべき消耗品であり、注ぎ足しはNGです。
エンジンオイルを注ぎ足す場合は、あくまで一時的な応急処置であることを十分認識した上で、現在使用しているものと同粘度のオイルを追加してください。
またエンジンオイルの添加剤とは、適量をオイルに混ぜることで、使用中のオイルに以下のような機能を付与する強化剤のようなものです。
- エンジンオイルの粘度を高めて、クリアランスの拡大によるオイル上がりを軽減する
- バルブシールやステムシールの密封性を高めて、オイル下がりを食い止める
なお、現在使用しているものより1ランク高い粘度のエンジンオイルへ交換するだけでも、潤滑性・密封性の向上等、添加剤の付与と似た効果が得られる場合があります。
琴平自動車をはじめ、カーショップではさまざまな効果を持つエンジンオイル添加剤やエンジンオイルが販売されています。整備士の意見を参考に、車の状態に合うものを選びましょう。
関連記事:「エンジンオイルの粘度は上げるべき?目的や選び方、注意点を解説」
第2段階:オイル上がりやオイル下がりを起こしている部品を交換する
「過去に整備士からオイル上がり・オイル下がりを指摘されている」場合や、「何度も異常なオイルの燃焼・消費が確認されている」場合は、より根本的な修理が必要になります。
車を整備工場等へ持ち込み、整備士にエンジンの解体とオイル上がり・オイル下がりの原因となっている部品の交換、そしてエンジンオイルの全量交換までしてもらいましょう。
なお交換する部品の選択肢には、新品・純正品の他に琴平自動車でも扱っているリビルト品(オーバーホール部品)もあります。
関連記事:「純正品と正規品の違いは?交換前に知っておきたい車の部品の基本」
第3段階:エンジンのオーバーホール等、大規模な修理を検討する
エンジンオイルの異常な燃焼・消費の他、マフラーから白煙が上がる等の症状が確認されている場合は、既にエンジンが相当なダメージを受けていると推測されます。
その場合は、トラブルを引き起こしている原因部品やエンジンオイルの交換だけでは状態が改善しないため、エンジンのオーバーホールや新品への交換が必要になるかもしれません。
オーバーホールとは、機械製品を細かな部品単位まで分解した上で洗浄と補修、交換、再構築と完成検査を実施し、新品同様になるまで修理・整備すること。
ただ、エンジンのオーバーホールや載せ替えまで行なうとなると高額な修理費用がかかるため、廃車にした方が安く済むケースもあります。
専門知識を持つ整備士のアドバイスをもとに、オーバーホールと新品への交換、または廃車のどの選択肢を取るべきなのか、よく考え決定してください。
関連記事:「リビルト品の意味とは?修理に使うメリット・デメリットを学ぼう」
必要以上にエンジンオイルが燃えることへの予防策は?
異常なペースでエンジンオイルが燃焼・消費する原因は、オイルの劣化や過不足にあります。
そのため、必要以上のエンジンオイルの燃焼や消費を予防するには、こまめなメンテナンスによるオイルの状態管理と定期的な交換が、何よりも効果的です。
以下を参考に、エンジンオイルの日常的な点検と定期的な交換を習慣づけると良いでしょう。
- 車を使用する前、またはエンジン停止後10分後を目途にオイルの量と状態を確認する
- 冒頭で紹介した半年~1年に1回、または5,000~15,000㎞に1回の交換は必ず実施する/li>
関連記事:「エンジンオイルの量はいつ確認する?タイミングや正しい手順を解説」
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