琴平自動車株式会社

近年、ディーゼルエンジン車への世界的な排出ガス規制強化の流れを受け、トラック等に積極的に搭載されるようになってきたのが「尿素SCRシステム」と「アドブルー」です。

そこで今回は、小型・普通車からトラック等の大型車向けに至るまで幅広く車用品やパーツを扱う琴平自動車が、アドブルーがトラック等のディーゼル車に搭載される理由について解説。

併せて、消耗品であるアドブルーをトラックに補充すべきタイミングや、補充時にかかる費用の目安も紹介していきます。

アドブルー（AdBlue）がトラックに必要な理由

まずはアドブルーを大型のバス、トラック等へ搭載しなければならない理由を、アドブルーや尿素SCRシステムの概要とともに学んでいきましょう。

アドブルーと尿素SCRシステムの概要

アドブルーとは、ディーゼルエンジンの排気ガス中に含まれる窒素酸化物（NOx）を分解・浄化するとともに、燃費を向上させる働きを持つ高品位尿素水の一種です。尿素SCRシステムを機能させるための薬剤であるため、ディーゼル車にはこのシステムと一緒に搭載されます。

そして尿素SCR（Selective Catalytic Reduction）システムとは、ディーゼルエンジンから出るガスの排気経路上に設置される排出ガス浄化システムの名称です。

具体的な仕組みとしては、アドブルータンクとアドブルー添加システム、車のエンジンの動きを制御するECUと連携し、マフラー内で排気ガスにアドブルーを噴射します。高温下で気化したアドブルーは、酸化触媒・尿素SCR触媒の中で加水分解されてアンモニアに変化した後、化学反応を起こして有害な窒素酸化物を無害な水（H2O）と窒素（N）に分解するのです。

なお「アドブルー」「AdBlue」は、ドイツ自動車工業会（VDA）の商標登録であり、琴平自動車でもお取り扱いしている製品の一つです。アドブルーという商品名を使用できる高品位尿素水は、原則、ドイツ自動車工業会から認証を受けた製品のみとなります。

尿素SCRシステムにアドブルーは不可欠

ここまでに見てきたように、尿素SCRシステムを機能させるにはアドブルーが欠かせません。そのため車の種類や大小に関わらず、尿素SCRシステムを搭載するすべてのディーゼルエンジン車には、アドブルーの搭載が必須となるのです。

ただ、ディーゼル車の排出ガス浄化システムは、尿素SCRシステムだけではありません。尿素SCRシステムを搭載しておらず、他の浄化システムを利用しディーゼル車の排出ガス規制に対応するトラックの場合は、当然ながら、アドブルーを搭載・補充する必要もなくなります。

関連記事：「アドブルーとは？尿素SCRシステムの仕組みやディーゼル車での役割と一緒に学ぼう」

アドブルーは消耗品！トラックへの補充時期の目安は？

アドブルーは、燃料と同じくトラック等のディーゼル車を動かす度に消費される消耗品です。

一般的には、1,000㎞走行するごとにおよそ1リットルのアドブルーを消費すると言われており、タンク容量別に補充が必要になる走行距離をまとめると以下一覧のようになります。

• 小型（2t）トラックの場合：およそ12,000～27,000㎞
• 中型（4t）トラックの場合：およそ26,000～36,000㎞
• 大型（10t）トラックの場合：およそ35,000～55,000㎞

なお実際のアドブルー消費ペースは、トラックの車種やメーカーごとの仕様、アイドリングの頻度や普段の走行・積載条件により変わってきます。上記はあくまで目安と考え、アドブルー残量を知らせるメーター横の警告灯をこまめにチェックし、補充する習慣をつけましょう。

ちなみに、アドブルーの補充が必要になるタイミングは、エンジンオイルの交換タイミングとほぼ同じだとされています。定期的にトラックの走行距離やアドブルー残量を確認するのが面倒だったり、前回の補充時期を覚えていられないという方は、1年に1回エンジンオイルを交換する時にアドブルーも一緒に補充することをおすすめします。

関連記事：「エンジンオイルの基本を解説！仕組みや役割・適切な交換時期とは？」

アドブルーがなくなるとトラックが動かせなくなる！

尿素SCRシステムを搭載するディーゼル車は、アドブルーなしでエンジンを始動できない構造になっています。走行中にアドブルーが無くなったことに気が付き、そのままエンジンを切ると、エンジンを再始動できずトラックを動かせなくなるため注意が必要です。

一方で、アドブルー残量がゼロになっても走行自体は続けられますが、アドブルーがない状態でトラックを動かすと、センサー類の異常や車両トラブルの原因となります。可能な限り、適切なタイミングで補充するように心がけ、アドブルー切れを起こさないようにしましょう。

高品位尿素水と一般的な尿素水、アンモニア水の違い

アドブルーは、車載を前提に尿素と純水を32.5％：67.5％の割合で混合した高品位尿素水です。

比率が異なる一般的な尿素水の他、似た原料から作られるアンモニア水やアンモニア成分を含む尿、水道水等で代用できる薬剤ではありません。この点も、併せて覚えておきましょう。

関連記事：「アドブルーの代わりに水を入れると危険？代替品の使用が車に及ぼす影響・リスクとは」

トラックのアドブルー補充にかかる費用の目安は？

ここからは、琴平自動車でのアドブルーの販売価格を基準に、トラックのアドブルー補充にかかる費用の目安を紹介していきます。

琴平自動車では、搭載車種に関係なく平均で10リットルあたり3,000円〜、20リットルあたり4,000円〜アドブルーを販売しております。そして、各サイズのトラックのアドブルータンクの容量の目安は、それぞれ以下の通りです。

• 小型（2t）トラックの場合：およそ15～30リットル
• 中型（4t）トラックの場合：およそ30～40リットル
• 大型（10t）トラックの場合：およそ40～60リットル

上記のタンク容量と琴平自動車でのアドブルー販売価格をもとに、各サイズのトラックのアドブルー補充にかかる費用を算出すると、概ね以下のようになります。アドブルーの補充に際し、費用を確保する上での参考にご覧ください。

• 小型（2t）トラックのアドブルー補充にかかる費用目安：5,000～10,000円前後
• 中型（4t）トラックのアドブルー補充にかかる費用目安：10,000円前後
• 大型（10t）トラックのアドブルー補充にかかる費用目安：10,000～15,000円前後

なおアドブルーは、ガソリンスタンドやカーショップ、整備工場等で購入が可能ですが、販売価格は店舗・企業により異なります。実際の購入に必要な費用については、アドブルーを購入される店舗へ直接ご確認ください。

アドブルーを購入しトラックで保管する際の注意点

走行中のアドブルー切れへの対策として、あらかじめ必要量のアドブルーを購入し、トラックに搭載して持ち運んでいるというドライバーも少なくないでしょう。しかし、アドブルーには熱に弱く、外気温が上がると保管・使用できる期間が極端に短くなるという弱点があります。

また水や異物混入による変質、外気温が-11度以下になった際の結晶化にも注意が必要です。

トラックの車内は、エアコンを使用しないと真夏には70度以上の高温に、真冬には-10度を下回ることも珍しくありません。万が一のためにずっとトラックに積んでいたアドブルーが、必要になった時に使えないということのないように、アドブルーは以下の条件を満たす場所で保管するようにしてください。

• 直射日光が当たらず、風通しの良い涼しい場所
• 年間を通して気温が-10～30度の範囲を保てる場所
• 雨水や水道水、異物が混入する恐れの少ない場所

関連記事：「アドブルーは劣化するとどうなる？使用することの危険性や成分・消費期限の変化を解説」

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