エンジンオイルの基本を解説!仕組みや役割・適切な交換時期とは?

エンジンオイルの基本を解説!仕組みや役割・適切な交換時期とは?

車のエンジンが人間の心臓に例えられるのに対し、エンジンオイルは血液に例えられます。

そこで今回は、エンジンオイルがどのような仕組みで働き、エンジンを動かしているのかについて、エンジンの種類や大小を問わず幅広く車の部品を扱う琴平自動車が解説します。

また、エンジンオイルについて学ぶ上で知っておきたい規格やベースオイルのこと、適切な交換のタイミングや種類の選び方についても、まとめて紹介していきます。

車のエンジンオイルの基本的な仕組みや知識を学びたいという方は、ぜひ参考にご覧ください。

エンジンオイルが、エンジンを動かす仕組みとは

エンジンオイルが、エンジンを動かす仕組みとは

まずは、潤滑油の一種であるエンジンオイルがどのようにエンジンを動かしているのか、その仕組みを簡単に理解しましょう。

エンジンオイルは、エンジンの中でも下部(底部)にあるオイルパンに格納されています。

そしてオイルパンの上にはクランクシャフト、ピストンという部品があり、それぞれ以下のような働きをしています。

  • クランクシャフト:ピストンの上下運動と連動して、エンジンオイルを汲み上げる
  • ピストン:ガソリンや軽油が燃えるエネルギーを利用し、上下運動を繰り返す

エンジンが動き出すとピストン、クランクシャフトも連動して動きだし、オイルパンからエンジンオイルを汲み上げてエンジン内の各所へ行き渡らせます。

その後、エンジンオイルは重力に従ってオイルパンへ戻り、エンジンが稼働する限り循環を続けるのです。

エンジンオイルが、エンジンに不可欠な理由

エンジンの稼働中、休むことなく激しい運動を繰り返すクランクシャフトやピストン等の金属部品は、常に強い摩擦や熱、振動にさらされています。

そのまま動かし続ければ、熱や摩擦に耐えられなくなった金属部品が摩耗や焼き付きを起こし、すぐにエンジンが壊れてしまうでしょう。

潤滑油であるエンジンオイルは、エンジン内部の金属部品に行き渡って表面を油膜でコーティングし、部品同士が接触する際の衝撃や熱、摩擦を和らげる機能を持っています。

人間の心臓が血液の流れによって動くように、車のエンジンもまた、エンジンオイルの循環によって保護され、安全に動き続けることができるのです。

エンジンオイルが働く仕組みと5つの役割

エンジンオイルが働く仕組みと5つの役割

車のエンジンオイルには、大きく密封・潤滑・冷却・洗浄・防錆と5つの役割があります。

ここではエンジンの仕組みに深く関わり、正常な稼働に欠かせないエンジンオイルの役割について、より具体的に見ていきましょう。

エンジンオイルの役割①密封

エンジンオイルが持つ役割の1つ目は、エンジン内の部品の間にある「クリアランス」と呼ばれる隙間を油膜で塞ぎ、気密性を高めて燃焼エネルギーを逃がさないようにすることです。

エンジンの密封性が高まることにより、エネルギーの精製効率と省燃費性も向上します。

エンジンオイルの役割②潤滑

エンジンオイルの役割の2つ目は、潤滑性を高めて部品同士の摩擦を軽減することにあります。

1分間に数百~数千回もの運動を繰り返すクランクシャフトやピストン等、エンジンの金属部品の表面に油膜を張って保護し、激しい損傷や焼き付きを防ぐのです。

エンジンオイルの役割③冷却

エンジンオイルが持つ3つ目の役割は、エンジン全体の冷却機能です。

エンジンオイルは、ガソリンや軽油を燃やすことで発生する燃焼熱や部品が起こす摩擦熱をエンジン内を巡る過程で吸収し、オイルパンまで持ち帰って冷ます役割も担っています。

エンジンオイルの役割④洗浄

外部の空気と一緒にガソリンや軽油を燃やすエンジン内には、スラッジと呼ばれる汚れが溜まっていきますが、これらの吸着・分散・溶解・洗浄もエンジンオイルの役割です。

長く使用したエンジンオイルが黒く変色するのは、この洗浄機能のためだと言われています。

関連記事:「エンジンオイルの劣化をどう判断する?基準と交換時期の見極め方

エンジンオイルの役割⑤防錆

外部との温度差でエンジン内部に発生した水滴は、金属部品の表面に付着すると錆びやエンジンの機能低下、短寿命化の原因となります。

そのため、エンジンオイルには部品表面をコーティングすることで水滴の付着と錆びの発生を予防する機能も備わっているのです。

エンジンオイルの仕組みを支える「品質・粘度規格」とは

エンジンオイルの仕組みを支える「品質・粘度規格」とは

日本で販売されているエンジンオイルは、必ず何らかの製品規格に則って製造されています。

具体的にはAPI・ILSAC・JASO等の規格に沿ってエンジンオイルの性能や特徴を、SAE規格に基づいて粘度を製造・評価し、それぞれの等級をパッケージ表記するのが一般的です。

ここではエンジンオイルの仕組みと併せ、基本的な知識として知っておきたい規格の概要について「品質規格」と「粘度規格」に分けて説明していきます。

エンジンオイルの品質を表す規格

日本で一般的に使われるエンジンオイルの品質規格はAPI規格、ILSAC規格、JASO規格の3つです。それぞれの表記方法や等級の特徴については、以下をご確認ください。

API規格とは

米国石油協会(API)とアメリカ自動車技術者会(SAE)、アメリカ材料試験協会(ASTM)の三者が取り決めた規格です。

ガソリンエンジンオイルは「S」、ディーゼルエンジンオイルは「C」から始まるアルファベットの組み合わせで表記し、日本では主にガソリンエンジン向けの規格として浸透しています。

SとC、それぞれの後に来るアルファベット・数字が大きくなるほど最新かつ高品質なオイルであることを示しており、適合した製品にはドーナツマークと呼ばれるマークが記載されます。

関連記事:「エンジンオイルのAPIとは?規格ごとの表記の見方やグレードを解説

ILSAC規格とは

米国自動車工業会(AAM)と日本自動車工業会(JAMA)が共同で設立した国際潤滑油標準化認証委員会(ILSAC)が、ガソリンエンジンオイルに対してのみ定めた品質規格のことです。

API規格に省燃費性を加味した評価基準となっており、「SP/GF-6」のように、API規格と併記されることも珍しくありません。

また「GF」の後に来る数字が大きくなるほど新しく、高品質なオイルであることを示す点も共通しています。適合した製品には、スターバーストマークと呼ばれる認証マークが付きます。

JASO規格とは

日本自動車技術会(JASO)が、日本国内で使用するエンジンオイルに向けて定めた規格です。

ガソリンエンジン・ディーゼルエンジン向けはもちろん、車の4サイクルエンジンだけでなく、バイク用の2サイクルエンジン向けにも規格が定められている点は、大きな特徴でしょう。

なおJASOの「DH-2」規格は、2023年現在において日本産の高負荷ディーゼルエンジン車(トラックやバス等の大型車)の主流となっています。

エンジンオイルの粘度を表す規格

エンジンオイルの密封性と潤滑性に大きく関わる粘度は、アメリカ自動車技術者会(SAE)が定めるSAE規格に沿って設定・評価するのが一般的です。

具体的には「5W-20」や「15W-40」等の表記で、低温時・高温時のオイル粘度を示します。

  • 前半の「5W」や「15W」:低温時の粘度と対応可能な最低気温の目安
  • 後半の「20」や「40」:高温時の粘度

関連記事:「エンジンオイルの粘度指数とは?言葉の意味と粘度表記の読み解き方

エンジンオイルには、温度が低くなると硬くなり、高くなると柔らかくなる性質があります。

基本的には前半の数字が小さいほど低温に強く、冬季や寒冷地でもエンジンオイルの流動性とエンジンの始動性を確保しやすいと考えればOKです。

対して後半の数字は、大きくなるほど高温時のエンジンオイルの粘度が高く、エンジンの高速回転中も油膜が厚い状態を維持できると理解しておきましょう。

関連記事:「エンジンオイルの粘度は上げるべき?目的や選び方、注意点を解説

エンジンオイルの仕組みを支える「ベースオイル」とは

エンジンオイルの仕組みを支える「ベースオイル」とは

続いて、エンジンオイルの基本的な性能を決めるベースオイルについて説明していきます。

ベースオイルとは、エンジンオイルの基礎となるオイルのことで、基油(きゆ)とも呼ばれています。

車やバイクのエンジンオイルは、ベースオイルに以下のような各種添加剤を加えて特性を出したり、性能バランスを調整した潤滑油なのです。

エンジンオイルに使われる添加剤の例

酸化防止剤、摩擦調整剤、錆止め添加剤、粘度指数向上剤、清浄分散剤、消泡剤、流動点降下剤  等

なお、エンジンオイルのベースオイルには、製法・価格・性能が異なる4種類のオイルが使われています。以下で、その種類と特徴を見ていきましょう。

ベースオイルの種類①鉱物油

原油を蒸留して作る原料から、有害物質とエンジンオイルに不要な物質を除去したオイル。

他のベースオイルよりも安価であること、そして通勤・通学には十分な機能を有することから広く一般に流通していますが、酸化・揮発しやすく、こまめな交換が必要です。

ベースオイルの種類②全合成油

原油を蒸留して作る原料から、でき得る限り不純物を取り除いて精製したオイル。

同じ原料を使っていながら鉱物油、後述する部分合成油よりも高品質であるため、高値で取引されます。通勤や通学よりも、サーキットで高速走行するレーシングカー向きの性能です。

ベースオイルの種類③部分合成油

鉱物油に対し、20~30%の割合で全合成油をブレンドしたオイル。

2種類のベースオイルの良いとこどりをしたような性能と価格のバランスが特徴で、高速道路を使うような長時間・長距離での車の使用が多い方におすすめです。

ベースオイルの種類④化学合成油

他の3種類とは異なり、人工的・化学的に鉱物油の分子構造を変化させてつくるオイル。

高い耐摩耗性と耐熱性があること、そしてさまざまな条件下で安定した性能を発揮できるところが魅力ですが、その分、価格も高くなります。

関連記事:「エンジンオイルに含まれる成分とは?知っておきたいオイルの基礎知識

エンジンオイルの適切な交換時期と種類の選び方

エンジンオイルの適切な交換時期と種類の選び方

エンジンオイルは、車を使用する度に熱やスラッジ、汚れによって劣化していく上、空気に触れるだけでも酸化が進みます。

また、温度が高すぎても低すぎても性能が低下するため、4サイクルエンジンを搭載する車の場合は定期的な交換が、2サイクルエンジンを搭載するバイクの場合は定期的な補充が必要です。

なお、エンジンオイルの適切な交換時期は、新車の購入時または前回交換時からの走行距離・使用期間のいずれかを基準に判断します。

メーカーやディーラー、整備士が推奨する具体的なタイミングの目安は、以下の通りです。

小型・普通車のエンジンオイル交換目安

  • 走行距離:5,000~15,000㎞に1回
  • 使用期間:半年~1年に1回

トラックのエンジンオイル交換目安

  • 走行距離:小型または中型では10,000~20,000㎞、大型では20,000~40,000㎞に1回
  • 使用期間:1年に1回

ただし、高速道路や雪道、勾配が多い道の他、低速・短距離での走行、長距離・長時間での走行がメインと言う方は、シビアコンディションに該当します。

シビアコンディションでの走行が多い車は、上記の目安よりも早くエンジンオイルの劣化が進む傾向があるため、注意が必要です。

エンジンオイルの交換時期や種類は、車の取扱説明書を参考に決めよう

車の取扱説明書やメンテナンスノートには、その車種に推奨されるエンジンオイルの交換時期の目安と粘度が、必ず記載されています。

エンジンオイルの交換は、基本的にお乗りの車の取扱説明書で推奨されている走行距離・使用期間のいずれか早い方のタイミングで実施すれば、問題ないでしょう。

なおシビアコンディションでの走行が多い場合は、メーカーが推奨する走行距離・使用期間が半分過ぎたタイミングで、エンジンオイルを交換することをおすすめします。

また、エンジンオイルの種類についても、基本的にはお乗りの車の取扱説明書で推奨されている粘度・規格・等級のものを選んでください。

関連記事:「エンジンオイルの量はいつ確認する?タイミングや正しい手順を解説

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