エンジンオイルのAPIとは?規格ごとの表記の見方やグレードを解説
エンジンオイルを購入する際、パッケージに「API」等の表記を見つけたことはありませんか。
これらはエンジンオイルのグレード(等級)と、その基準となる規格の種類を示すための表記ですが、規格・等級の違いや表記の見方がわからないと言う方も多いでしょう。
そこで今回は、小型・普通車からトラック等の大型車向けまで、車のパーツを幅広く扱う琴平自動車がエンジンオイルの規格とグレードについて、それぞれの特徴と一緒に解説します。
併せて、お乗りの車に合う規格・グレードのエンジンオイルの選び方も紹介していきますので、エンジンオイルの種類や規格表記やグレードの理解に、ぜひお役立てください。
目次
API等、エンジンオイルの規格とは?
規格とは、一定以上の質と性能の品物を作り、販売するための製造・評価の基準のことです。
エンジンオイルにも規格があり、日本ではAPIをはじめとする以下3ついずれかの規格に基づいてグレード付けし、粘度と一緒にパッケージへ表記します。
日本のエンジンオイルに使われる代表的な規格3つ
- API規格
- ILSAC規格
- JASO規格
例えば「SN 10W-20」や「GF-5 0W-30」「DL-1 10W-30」等がこれに当たり、それぞれ前半の表記が規格とグレードを、後半の数字とアルファベットが粘度を表しています。
関連記事:「エンジンオイルの粘度指数とは?言葉の意味と粘度表記の読み解き方」
所有する車に合う規格、グレードのエンジンオイルを選ぶには?
どの規格のエンジンオイルも、性能はグレード・価格と比例して新しく、高くなります。
具体的には、グレードと価格が高いエンジンオイルほどエンジンの省燃費性能や抵抗抑制、耐久性等を高める効果が期待できるでしょう。
ただし、お乗りの車の種類や年式、状態に合った規格・グレードのものを選ばなければ、エンジンオイルの性能は十分に発揮されません。
そのため、琴平自動車でもAPI・ILSAC・JASOと各規格のエンジンオイルを扱っていますが、基本的にはメーカーが推奨する規格・等級のオイルを選ぶことをおすすめしています。
「とにかく高い、新しいエンジンオイルが良い」というわけでもないので、基本的には取扱説明書やメンテナンスノートに記載されている規格・グレードのオイルを選んでください。
なお、走行距離が長い車やシビアコンディションでの走行が多い車では、エンジンオイルの種類を変えた方が良いケースもあります。
「自分の車に合うエンジンオイルがわからない」という場合は、車の状態と併せて整備士に伝え、アドバイスをもらうと良いでしょう。
関連記事:「エンジンオイルの粘度は上げるべき?目的や選び方、注意点を解説」
エンジンオイルの規格、グレードを左右するもの
エンジンオイルは、基材となるベースオイルに各種の添加剤を混ぜ、性能を調整して作られています。
つまりベースオイルと添加剤の種類、量、組み合わせによって、エンジンオイルの品質やグレードは大きく変わってくるのです。
ここでは、エンジンオイルの「ベースオイル」と「添加剤」の代表的な種類と特徴について確認していきましょう。
エンジンオイルに使うベースオイルの種類
エンジンオイルのベースには、原油を蒸留して作る鉱物油を原料としているものの、精製方法と特徴が異なる以下いずれかのオイルが使われています。
鉱物油
精製の過程で、エンジンオイルにとって不要・有害な成分のみを除去したベースオイル。揮発性が高く酸化しやすいですが、安価で取引されるため、広く一般に流通しています。
全合成油
精製の過程で可能な限り不純物を除去した高品質なベースオイル。エンジンの始動性と潤滑性が高いのが魅力ですが、高価なため、主にサーキットを走るレーシングカーに使用されます。
部分合成油
鉱物油に、20~30%の割合で全合成油を混ぜたベースオイル。価格と性能のバランスが良いところが最大の特徴で、高速道路を使用するような長時間・長距離の走行にも対応しています。
化学合成油
鉱物油を化学分解し、分子構造を変化させて高温や摩擦への耐性を高めたベースオイル。4つの中では最も高価ですが、車や環境への保護意識が高いドライバーからは人気が高い種類です。
関連記事:「エンジンオイルの種類や違いを解説!性能を変える4つの要素とは?」
エンジンオイルに混ぜる添加剤の代表例
添加剤は、エンジンオイルが持つ密封・潤滑・冷却・洗浄・防錆の作用を高めたり、性能のバランスを整える目的で配合されます。
特にエンジンオイルに使われることの多い添加剤の種類と、それぞれの配合目的としては、以下が挙げられるでしょう。
- 粘度指数向上剤:オイルの粘度を維持・向上させ、熱への耐久性を高める
- 摩擦調整剤:油膜の厚みを増す等して、エンジン内部の部品を摩擦から守る
- 酸化防止剤:エンジンが発する熱や、外部から取り込む空気による錆びを防ぐ
- 洗浄分散剤:スラッジと呼ばれるエンジン内の燃えカスやゴミを、オイルに取り込む
- 消泡剤:オイルを酸化させる一因となる気泡の発生を抑制するとともに、素早く消す
- 極圧剤:エンジン内の金属部品にかかる圧力を軽減し、保護する
- 着色剤:他のオイルと間違われることのないよう、エンジンオイルを着色する
関連記事:「エンジンオイルの劣化をどう判断する?基準と交換時期の見極め方」
API規格:ガソリンエンジンオイルのグレード
ここからは、日本で使われている3つの規格別にそれぞれの表示方法やグレードの条件、特徴を見ていきましょう。
まず紹介するのが「API規格」です。下記三者が定める規格であり、ガソリンエンジンオイルは「S」、ディーゼルエンジンオイルは「C」から始まる2つのアルファベットで性能を表します。
SとC、それぞれの後に来るアルファベットが進むほど、新しく高性能であることが特徴です。
- 米国石油協会(API)
- アメリカ材料試験協会(ASTM)
- アメリカ自動車技術者協会(SAE)
ただし、日本においてはガソリンエンジンオイルの規格として使用するのが一般的であり、ディーゼルエンジンオイルの規格としてはあまり認識されていません。
そこで以下に、ガソリンエンジンオイルに使われる13のAPI規格表示を紹介します。
SA | 添加剤を含んでいない、いわゆるベースオイルのこと。運転条件が緩やかなエンジンに使用可能ですが、添加剤入りのエンジンオイルの使用を前提とした現代の車には使用できません。 |
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SB | ベースオイルにかじり防止、腐食防止、酸化安定等を高める添加剤を加え、エンジンオイルとして最低限必要な機能を加えたオイルのことです。SAと同じく、現代の車には向きません。 |
SC | デポジット防止性や摩耗防止性、錆止め性、腐食防止性が備わったオイルのこと。1964~67年型のガソリン乗用車、トラックに満足して使用できるだけの品質を有しています。 |
SD | 全体的にSCより高い品質レベルを持ったオイルで、ブローバイガス還元装置を取り付けた1968~71年型のガソリン乗用車、またはトラックに使用できます。 |
SE | SDに比べ酸化、錆び、腐食防止等の性能が高いオイルで、1972~79年型のガソリン乗用車、またはトラックに使用できます。 |
SF | 酸化や錆び、腐食の他、摩耗防止性や高温・低温時のデポジットに対し、高い防止性能を発揮するオイルです。1980年型以降のガソリン乗用車、及びトラックに使用できます。 |
SG | SFよりも高い酸化安定性と耐摩耗性、耐スラッジ性を有しており、エンジンの長寿命化に役立つオイルです。1989年型以降のガソリン乗用車、またはトラックに使用できます。 |
SH | SGの性能に、さらに高温洗浄性やスラッジ防止性、省燃費性、低温始動性等を加えたオイルです。1993年型以降のガソリン乗用車、及びトラックに使用できます。 |
SJ | SHの性能をもとに、さらにせん断安定性、蒸発性を向上させたオイルです。1996年型以降のガソリン乗用車、またはトラックに対応しています。 |
SL | 2001年度に制定されたオイルで、高い省燃費性、排出ガス浄化、オイル劣化防止性能が付与されています。SJ以前のグレードに比べ、環境へ配慮した性能が付与されているのが特徴です。 |
SM | SLよりもさらに高い省燃費性、排気ガス浄化性能を有している他、耐熱性と耐摩耗性にも優れたオイルです。2004年度に制定されています。 |
SN | 2010年度制定のグレードで、SMよりも省燃費性能の持続時間が長いのが特徴です。また触媒保護性能と低温流動性も強化されており、酸化への耐性も向上しています。 |
SP | 2020年度に制定された、API規格では最新のグレードです。SN以前のオイルに比べ省燃費性能、耐スラッジ性等が向上している他、近年型の高性能エンジン機構にも対応しています。 |
ILSAC規格:ガソリンエンジンオイルのグレード
続いて紹介する「ILSAC規格」は、米国自動車工業会(AAM)と日本自動車工業会(JAMA)が設立した国際潤滑油標準化認証委員会(ILSAC)が定めた規格です。
ガソリンエンジンオイル用の規格であり、APIに省燃費性能を加えて設定されているのが特徴で「GF」の後に来る数字が大きくなるほど新しく、高いグレードであることを示しています。
また「SP/GF-6」のように、APIの規格表示と併記されている場合が多いところも特徴と言えるでしょう。
GF-1~6のグレードの条件や特徴、そしてAPI規格との対応については以下をご確認ください。
GF-1 | API規格のSHに相当するグレードです。スラッジ防止性、高温洗浄性に優れています。 |
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GF-2 | API規格のSJに相当するグレードです。GF-1よりも高い蒸発性、せん断安定性が付与されています。 |
GF-3 | API規格のSMに相当するグレードです。GF-2よりも省燃費性、排ガスへの浄化性能が向上しています。 |
GF-4 | API規格のSMに相当するグレードです。GF-3よりも高い排ガス浄化性能、耐熱性、耐摩耗性、耐久性を有しています。 |
GF-5 | API規格のSNに相当するグレードです。GF-4の性能のうち、特に省燃費性能の持続性を強化しているという特徴があります。 |
GF-6 | 2023年時点では、API規格のSPに相当する最新のグレードです。GF-5よりもさらに高い省燃費性能や清浄性、耐エンジンスラッジ性能を有します。 |
JASO規格:ディーゼルエンジンオイルのグレード
JASO規格は、日本自動車技術会(JASO)が主に国産、及びアジアのディーゼルエンジン用オイルに向けて定めた規格です。
小型・乗用車用のディーゼルエンジン向けには「DL」、トラック等の大型車搭載のディーゼルエンジン向けには「DH」の後に数字を付けて、オイルの規格とグレードを表示します。
なお、JASO規格は基本的に日本独自の規格であり、ディーゼルエンジンを搭載する日本産のバスやトラック等の大型車においては、「DH-2」規格が2023年現在の主流となっています。
そこで、ここからは小型・乗用ディーゼル車向けの規格であるDL-0~2と、大型ディーゼル車向けの主流となっているDH-2の規格・グレードの条件や特徴について、それぞれ紹介していきます。
DL-0 | 2017年に制定されたグレードです。クリーンディーゼルエンジンを搭載した小型・乗用車に対応し、動弁系部品の摩耗防止や清浄性、耐スラッジ性、高温時の酸化安定性に優れています。 |
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DL-1 | クリーンディーゼルエンジンの微粒子捕集フィルター(DPF)の目詰まり防止によるエンジンの長寿命化や省燃費性能の向上、環境負荷を軽減する目的で2005年に制定されたグレードです。
JASO規格の中では最も早く制定されたグレードであるため、DL-0と後述するDL-2も、このDL-1の規格がもとになっています。 |
DL-2 | 小型・乗用ディーゼル車のエンジン向けに、2021年に制定された最新の規格・グレードです。
オイル中の硫酸灰分規格値を、DL-1の0.6%から国際的な規格であるACEA規格のCに相当する0.7%以上0.8%未満にまで拡大しています。 |
DH-2 | 中型・大型のトラック等の高負荷ディーゼルエンジン向けに、2005年に制定されたグレードです。硫酸灰分規格値は1.1%以内と設定し、DPFの目詰まり防止と環境負荷へ配慮しています。 |
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