エンジンオイルに含まれる成分とは?知っておきたいオイルの基礎知識
エンジンの密封性・潤滑性を高め、さらに冷却と洗浄、防錆まで担うエンジンオイルは、どのような成分で構成されているのでしょうか。
今回は小型・普通車向けのガソリンエンジンオイルはもちろん、トラック等の大型車向けのディーゼルエンジンオイルまで扱う琴平自動車が、エンジンオイルの成分について解説。
エンジンオイルを構成する各成分の役割や、併せて知っておきたい規格のことまで、まとめて紹介していきます。
大切な車やバイクのために、エンジンオイルの成分について学んでおきたいという方は、ぜひ参考にご覧ください。
目次
エンジンオイルに含まれる成分は大きく2つ
エンジンオイルは、大きく「ベースオイル」と「添加剤」の2つの成分からできています。
エンジンオイルのベースオイルとは?
まず、1つ目の構成成分であるベースオイルとは、エンジンオイルの基礎となる油のことです。
基油(きゆ)とも呼ばれ、エンジンオイルが持つ揮発性や酸化のしやすさ、始動性と言った基本性能を大きく左右します。
エンジンオイルの添加剤とは?
そして2つ目の構成成分である添加剤とは、エンジンオイルの性能を調整する薬剤のこと。
基本的にはベースオイルが持つ長所を伸ばし、短所を補うよう配合しますが、組み合わせや割合を変えるとエンジンオイルが持つ性能バランスの調整、追加も可能になります。
ベースオイルと添加剤の種類や、それぞれが持つ役割・特徴については、以下で具体的に見ていきましょう。
エンジンオイルの成分①ベースオイルの種類
エンジンオイルの主成分であり、全体の80%を占めるベースオイルには、大きく鉱物油、全合成油、部分合成油、化学合成油の4種類があります。
それぞれの持つ性能や精製度合いの違い、ベースオイルとしての特徴は以下の通りです。
鉱物油
4種類のベースオイルのうち、最も古くからエンジンオイルに利用されてきた種類です。
原油を蒸留した鉱物油から有害、または不要な成分を精製過程で除去し、ベースオイルとしています。鉱物油をベースとしたエンジンオイルの特徴としては、以下が挙げられるでしょう。
- 他の3種類のベースオイルよりも、安価で取引されている
- 揮発性、酸化性ともに高いため、こまめな交換が推奨される
- 通勤・通学用には十分な品質なので、一般に広く流通している
全合成油
原料である鉱物油を精製する際、有害成分・不要成分に加え、不純物も除去した種類です。
高度な精製を行なっているため鉱物油、そして後述する部分合成油よりも高品質なオイルで、全合成油をベースとしたエンジンオイルには以下のような特徴が見られます。
- 鉱物油、部分合成油に比べ高価格で取引されている
- 耐熱性と耐摩耗性が高い上、低温時でも始動性が良い
- 通勤・通学よりも、サーキットを走るレーシングカー等の使用がメイン
部分合成油
鉱物油と全合成油、精製度合いの異なる2種類のオイルをブレンドした種類です。
価格・性能において両者の良いとこどりをしているところが最大の魅力で、部分合成油をベースとしたエンジンオイルには以下のような特徴があります。
- 鉱物油よりも高価だが、全合成油に比べると安価で取引される
- 2種類のベースオイルの短所を補い合い、良いところを活かした性能
- 毎日車を使う方や、高速道路を使った長時間・長距離の走行に適している
化学合成油
原料である鉱物油の分子構造を変化させ、化学的に耐熱性や耐摩耗性を高めた種類です。
鉱物油、全合成油、部分合成油と成り立ちの異なる化学合成油をベースとしたエンジンオイルには、以下のような特徴が見られます。
- 他の3種類のベースオイルよりも、高値で取引されている
- 安定性が高く、車や環境への負荷に配慮したエンジンオイルに使われやすい
- 高価格・高品質なため、車と環境への保護意識が高いドライバーにおすすめ
関連記事:「エンジンオイルの種類や違いを解説!性能を変える4つの要素とは?」
エンジンオイルの成分②代表的な添加剤の種類
対して添加剤は、エンジンオイル全体のうち20%ほどを構成する成分です。
ただ、配合される添加剤の種類や量については、ベースオイルの種類やエンジンオイルに付与・強化したい性能により大きく変わってきます。
そこで、エンジンオイルに使用されることの多い7種類の添加剤とその役割を一覧で見ていきましょう。
酸化防止剤
エンジンオイルの酸化を予防したり、初期段階で停止する目的でオイルに添加する薬剤です。
外部から取り込む空気や水分、燃焼ガス等の影響により常に酸化のリスクにさらされ続けているエンジンオイルには、欠かせない成分と言えるでしょう。
摩擦調整剤
エンジンオイルの粘度を高め、エンジン内の部品表面に張る油膜を厚くして、金属同士の摩擦を軽減するために添加する薬剤です。
近年では、特に省燃費性の高いエンジンオイルに必須の添加剤として知られています。
錆止め添加剤
硫黄や窒素酸化物等、エンジン内部で発生した錆びの原因成分を中和してくれる薬剤です。
また、鉄や銅等の金属表面に吸着することで、酸素や水との接触を防ぐ「油性向上剤」に近い作用を持つ種類もあります。
粘度指数向上剤
エンジンオイルがエンジン内の密封性・潤滑性を保つには、ある程度の粘度が必要です。
しかし、エンジンオイルの粘度は高温になると低下する性質があります。そこで、高温時でもエンジンオイルが十分な粘度を保てるように、粘度指数向上剤が添加されます。
具体的には、「油溶性高分子ポリマー」という薬剤が使用されるケースが多いでしょう。
清浄分散剤
エンジンを稼働させる際に発生するスラッジ(燃えカス等の沈殿物)の発生を予防するとともに、汚れを中和・溶解することで、エンジンオイルの劣化や汚染を防ぐ薬剤です。
また、エンジンオイル内に発生した汚れを取り込み、洗浄・排出する役割も持っています。
消泡剤
エンジンの稼働中、エンジンオイルはクランクという部品にかき回され、泡立っています。
消泡剤は、エンジンオイルの酸化や冷却機能・潤滑性の低下の原因となる気泡の発生を抑制する目的で添加されます。
流動点降下剤
ベースオイルには、そのオイルが流動性を保っていられる「流動点」という温度があります。
流動点降下剤はベースオイルの流動点を引き下げ、低温時にエンジンオイルが硬くなって流動性・始動性を損なうのを防ぐ薬剤です。
成分と併せて知りたいエンジンオイルの「規格」
エンジンオイルについて学ぶ上で二大成分と一緒に知っておきたいのが、どのようなオイルかを示す「規格表示」についてです。
エンジンオイルの規格には、大きくオイルの品質や性能・特徴を表すもの、粘度を表すものの2種類があり、どちらもアルファベットと数字でパッケージに表記されています。
日本のエンジンオイルに使われている代表的な規格と等級、そして具体的な表記の仕方については、以下で見ていきましょう。
エンジンオイルの品質や性能、特徴を示す規格
日本で販売するエンジンオイルの品質や性能・特徴については、API規格・ILSAC規格・JASO規格のいずれかに則って等級付けし、パッケージに記載するのが一般的です。
以下に、各規格の等級の種類と表記方法について簡単にまとめましたので、ご参照ください。
API規格
米国石油協会(API)、アメリカ自動車技術者会(SAE)、アメリカ材料試験協会(ASTM)の三者が取り決めた規格で、日本では主にガソリンエンジンオイルの規格として使われます。
2023年現在、「SA」~「SP」までの13の等級でガソリンエンジンオイルの品質や性能を表しており、Sの後にくるアルファベットが進むほど新しく、高性能なオイルとなります。
関連記事:「エンジンオイルのAPIとは?規格ごとの表記の見方やグレードを解説」
ILSAC規格
米国自動車工業会(AAM)と日本自動車工業会(JAMA)が設立した国際潤滑油標準化認証委員会(ILSAC)が、ガソリンエンジンオイルについて定める品質規格です。
2023年現在、「GF-1」~「GF-6」までの6つの等級でエンジンオイルの品質を表し、アルファベットの後に来る数字が大きくなるほど、新しく高性能なオイルとなります。
また「SP/GF-6」のように、API規格と併記されるケースが多いのも特徴と言えるでしょう。
JASO規格
日本自動車技術会(JASO)が、主に日本産、または日本で使用されるディーゼルエンジンオイルに向けて定めた規格です。
小型・乗用車に搭載するディーゼルエンジン向けには「DL」、トラック等の大型車のディーゼルエンジン向けには「DH」のアルファベットに数字を合わせて、等級を表します。
なお2023年現在、日本のトラック等に使うエンジンオイルの等級は「DH-2」が主流です。
エンジンオイルの粘度を示す規格
対してエンジンオイルの粘度については、米国自動車技術会(SAE)が定めるSAE規格に基づいて表記するのが一般的です。
具体的には「0W-20」や「15W-40」等の数字とアルファベットの組み合わせで低温時・高温時の粘度と、そのオイルが対応可能な最低気温の目安を表します。
関連記事:「エンジンオイルの粘度指数とは?言葉の意味と粘度表記の読み解き方」
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