エンジンオイルは上抜きが失敗しにくい!メリットや下抜きとの違いを解説

エンジンオイルは上抜きが失敗しにくい!メリットや下抜きとの違いを解説

車から古いエンジンオイルを抜く方法には、上抜きと下抜きがあります。一般的には上抜きの方が簡単で、DIY向きだと言われていますが、失敗することもあるのでしょうか。

そこで今回は、小型・普通車向けからトラック等の大型車向けまで、車の部品を幅広く扱う琴平自動車が、エンジンオイルの抜き方について解説。

上抜きと下抜きの違いはもちろん、それぞれの手法のメリット・デメリット、そしてエンジンオイルを上抜きする時によくある失敗についても、対策と一緒に紹介していきます。

エンジンオイルの交換を自分でやってみたいという方、抜き方を知っておきたいという方は、ぜひ参考にご覧ください。

エンジンオイルを抜く方法は上抜き・下抜きの2つ

エンジンオイルを抜く方法は上抜き・下抜きの2つ

先述した通り、車から古いエンジンオイルを抜く方法には上抜きと下抜きの2種類があります。
まずは以下で、上抜き・下抜きそれぞれの方法の概要と違いを学んでいきましょう。

エンジンオイルの「上抜き」とは

オイルチェンジャーを使い、文字通り車の上部からエンジンオイルを抜く方法です。

具体的には、エンジンオイル残量の確認に使う「オイルレベルゲージ」の挿入口にオイルチェンジャーのホースを差し込み、オイルパン内部のエンジンオイルを吸引します。

なおオイルチェンジャーとは、人力または電力でポンプを動かし、エンジンオイルを吸い出す道具のこと。カー用品店等で販売されていて、手動のものなら数千円から購入が可能です。

関連記事:「エンジンオイルの量はいつ確認する?タイミングや正しい手順を解説

エンジンオイルの「下抜き」とは

車の底部にあるドレンボルトを外し、下側からオイルパンを開けてエンジンオイルを抜く方法です。

上抜きが手動、または電気でエンジンオイルを吸い出すのに対し、下抜きではドレンボルトを外すとエンジンオイルが排出され、その後も自然落下を利用してオイルを抜くのが特徴です。

なおドレンボルトとは、オイルパンからのオイル漏れを止めるための部品のこと。
ドレンパッキン(またはドレンワッシャ)と一緒にオイルパンの排液口を締めることで、ドレンパッキンが潰れて隙間が埋まり、エンジンオイルが漏れるのを防いでくれます。

関連記事:「エンジンオイルの滲み・漏れはなぜ起こる?原因や適切な対処法とは

エンジンオイルを上抜きするメリット・デメリット

エンジンオイルを上抜きするメリット・デメリット

エンジンオイルの抜き方がわかったところで、次は上抜きと下抜き、それぞれの方法のメリット・デメリットを見ていきましょう。

エンジンオイルを上抜きすることのメリット・デメリットとしては、以下が挙げられます。

上抜きのメリット

動力を使うエンジンオイルの上抜きは、早ければ10分ほど、遅くとも数十分で終了します。

オイルチェンジャーの種類によっては、ある程度のスピード調整もできるため、自然落下に任せる下抜きに比べると大幅に作業時間を短縮できるでしょう。

また、オイルを抜くための準備も、基本的にはオイルチェンジャーを準備するだけでOK。
あとはボンネットを開けてオイルレベルゲージを抜き、オイルチェンジャーのホースを挿入するだけ、と非常にシンプルです。

下抜きのように車をジャッキアップをしたり、ドレンボルトを外す工程がないため、作業中に事故やトラブルが起きたり、失敗するリスクも低いと言えます。

さらに、ドレンボルトがない海外製の車でもオイル抜きができること、そして抜いたオイルがオイルチェンジャーの中に溜まるため、廃油処理しやすいところも大きなメリットでしょう。

関連記事:「不要な車の部品、どう処分する?適切に廃棄するための3つの方法

上抜きのデメリット

車やエンジンの種類によっては、走行中にエンジンオイルが一部に偏るのを防ぐため、オイルパンの内部に仕切り(バッフル)が付けられていることがあります。

その場合は、オイルチェンジャーのホースがオイルパンの底まで届かない、またはうまく挿入と吸引ができないため、エンジンオイルの上抜きができません。

また、エンジンオイルの上抜きにはオイルチェンジャーが不可欠となります。

このようにエンジンの仕様・形状によっては実施が不可能であること、そしてオイルチェンジャーを購入しなければならないところは、上抜きのデメリットと言えるでしょう。

エンジンオイルを下抜きするメリット・デメリット

エンジンオイルを下抜きするメリット・デメリット

対して、エンジンオイルを下抜きするメリット・デメリットとしては、それぞれ以下が挙げられます。

下抜きのメリット

エンジンオイルを下抜きする最大のメリットは、車の足回り点検まで一緒にできるところでしょう。

車の下に潜ると、普段は見ることのできない角度から車の状態を確認できます。
オイル漏れや部品の不良等の異常を初期段階で発見できれば、それだけエンジンへのダメージも軽微で済みますから、車にとって足回りの定期点検は非常に重要なのです。

また、ホースの挿入場所や角度にコツが必要な上抜きとは異なり、下抜きではドレンボルトの着脱さえうまくいけば、あとは自然落下に任せてオイルが抜けるのを待つだけです。

エンジンオイルの交換だけでなく、車の定期点検も兼ねたいなら、下抜きはメリットの大きい方法と言えるかもしれません。

下抜きのデメリット

一方でエンジンオイルを下抜きするデメリットとしては、車体のジャッキアップが不可欠であること、そして工数と必要な道具が多いところが挙げられます。

基本的にはオイルチェンジャーが1つあれば実施可能な上抜きに対し、下抜きを行うには、最低でも以下3つの道具・パーツを準備しなければなりません。

  • 車を持ち上げるのに使うジャッキ
  • 持ち上げた車体を安定させるためのリジットラック
  • 潰れた古いものと交換するための新しいドレンパッキン

また適切な方法で車を持ち上げて固定し、ドレンボルトを着脱するには、車の仕組みやボルトを締める力加減等について、ある程度の知識が必要です。

さらに、古いエンジンオイルがオイルチェンジャーに溜まっていく上抜きとは異なり、排出されたエンジンオイルが飛び散りやすいところも、下抜きのデメリットと言えるでしょう。

失敗しにくいエンジンオイルの抜き方は「上抜き」

失敗しにくいエンジンオイルの抜き方は「上抜き」

ここまでに見てきたエンジンオイルを上抜き、または下抜きにするメリット・デメリットの概要をまとめると、以下のようになります。

オイルチェンジャーを使う「上抜き」のメリット

  • 動力を使ってオイルを吸い上げるので、作業時間が短くて済む
  • 必要な道具がオイルチェンジャーだけで、実施の準備も簡単
  • 車体を持ち上げる必要がなく、工程も少ないため事故のリスクが低い
  • 抜いたエンジンオイルがオイルチェンジャーに溜まるため、処理しやすい
  • 一部の海外製品等、ドレンボルトのない車にも実施できる

オイルチェンジャーを使う「上抜き」のデメリット

  • バッフル付き等、一部種類のエンジンやオイルパンには実施できない
  • オイルチェンジャーが不可欠な手法のため、購入しなければならない

車体をジャッキアップする「下抜き」のメリット

  • エンジンオイルの交換と足回りの点検を一緒に実施できる
  • エンジン周りのトラブルや故障に、初期段階で対応できる可能性が高くなる
  • 自然落下に任せる手法なので、エンジンオイルを抜くための技術がいらない

車体をジャッキアップする「下抜き」のデメリット

  • ある程度の知識が不可欠であるため、初心者は失敗する恐れがある
  • 上抜きに比べ、リジットラックやドレンワッシャ等、必要な道具が多い
  • 持ち上げた車の下に潜り込むため、事故やトラブルに遭うリスクが高い

以上を踏まえると、正しい手順で行わなければ事故やオイル漏れのリスクが高くなる下抜きは、上抜きに比べ失敗しやすい手法と言えます。

そのため、車の点検や整備の第一歩として初めてオイル交換に挑戦するという方には、あまりおすすめできません。

整備士等、車の専門知識を持つ方以外がエンジンオイルの交換を行う場合は、構造的に不可能な場合を除いて上抜きでオイルを抜くのが望ましいでしょう。

上抜きと下抜き、車に適したオイルの抜き方を見極めるには?

お乗りの車にとって、上抜きと下抜きのどちらの手法が適しているかを見極めたい時は、まずオイルレベルゲージの有無を確認してください。

目視の他、車の取扱説明書も一緒に確認してオイルレベルゲージの場所がわからない場合は、上抜きが不可能な構造だと考えられます。

そういった時は車を整備工場等へ持ち込み、下抜きでエンジンオイルを交換してもらいましょう。

また、オイルレベルゲージの挿入口があっても、抜き取ったオイルレベルゲージが湾曲しているようなら、オイルパン内部の構造が複雑なのかもしれません。

この場合も、エンジンオイルを上抜きするには向かない可能性が高いので、整備士に下抜きを依頼しましょう。

もし「オイルレベルゲージはあるけど、上抜きと下抜きのどちらが良いのかわからない」という場合は、一度上抜きをしてみて、その後で下抜きをしてみるのがおすすめです。

上抜きをしているのに、ドレンボルトを外してエンジンオイルが流れ出てくるようなら、上抜きではオイルが抜けていないことになります。

一方で、上抜きの後にドレンボルトを外しても数滴しかオイルが出てこない、またはまったく出てこないという場合は、上抜きでしっかりとエンジンオイルが抜けている証拠です。

次回以降は、上抜きでエンジンオイルを抜いて新しいオイルを入れると良いでしょう。

なお、上抜きと下抜きのどちらの方法でエンジンオイルを抜くべきか迷ったら、無理をせずプロにオイル交換を頼むか、馴染みの整備士さんに相談してみてください。

関連記事:「エンジンオイルの劣化をどう判断する?基準と交換時期の見極め方

エンジンオイルの上抜き、よくある失敗と対策

エンジンオイルの上抜き、よくある失敗と対策

最後に、エンジンオイルを上抜きする際によくある失敗例と、その対策を紹介していきます。

初めてエンジンオイルの交換に挑戦するにあたり、もしもうまくいかないことが出てきたら、まずは以下を参考に対処してみてください。

失敗①オイルチェンジャーのホースが挿入口に入らない

この場合は、オイルチェンジャーのホースの口径がオイルレベルゲージの挿入口に合っていないと考えられますので、より小さな口径のホースに交換しましょう。

なお、口径が小さいほどオイルチェンジャーのホースはやわらかく、扱いやすくなりますが、エンジンオイルを吸う速度は遅くなります。

オイルチェンジャーのホースは、あらかじめオイルレベルゲージ挿入口の口径を確認した上で、扱いやすいサイズのものを選んでください。

失敗②エンジンオイルが吸いきれず、オイルパン内部に残ってしまう

オイルパンの底が、平坦な構造になっているとは限りません。凹凸のある作りになっていると、へこんだ部分にオイルが残り、一度吸い上げただけでは取り切れない場合があります。

上抜きをしたのに、どうもエンジンオイルを取り切れていないと感じる時は、ホースの位置や差し込み角度を少しずつ調整してみましょう。

それでもオイルパン内に多量のエンジンオイルが残るようなら、下抜きに切り替えた方がいいかもしれません。

失敗③エンジンオイルが硬く、うまく吸引できない

エンジンオイルは、温度が下がると粘度が上がり、硬くなる性質を有しています。そのため、冬季や寒冷地で上抜きをしようとすると、硬くて吸い上げに失敗することがあるのです。

その場合は、事前に5~10分ほどエンジンを動かし、エンジンオイルを温めておきましょう。

するとエンジンオイルの温度が上がり、粘度が下がってやわらかくなるため、オイルチェンジャーで吸い上げやすくなります。

関連記事:「エンジンオイルの粘度指数とは?言葉の意味と粘度表記の読み解き方

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